重症心不全外科治療

1.左室形成術

●冠動脈の狭窄が原因で生じた虚血性心筋症(心筋に血流が足りないことで生じる心筋症)
●心筋梗塞により左心室の壁が壊死しそこが薄くなって生じる心室瘤
●特発性拡張型心筋症
●その他

上記のような病気が原因で心臓が異常に拡大すると心不全を生じます。
そうなると薬での治療は限界があり、このままでは生命の危険を生じるか、日常生活に大きな支障がでると判断されます。
このような場合には左心室を切除あるいは縫い縮めることで心不全を治療出来る可能性があります。

手術は全身麻酔下に行います。
心臓の筋肉を切開するために通常は心臓を止めます。
この間は心臓の代わりに全身に血液を流すため人工心肺という装置を取り付けますが、終わればすぐ心臓を動かしてこの装置は取り外します。
(心機能が非常に悪い場合は心臓を動かしたままで手術を行うこともあります。)

基本的に動きの悪い部分を切除し再建(心臓を縫い合わせる)します。
様々な方法があり術前にある程度予想できますが、最終決定は術中に心臓のどの部分が動きが悪く拡大しているかによって、切除・再建方法が決まります。

1.左室形成術

2.補助循環

心臓の収縮機能が極めて悪化し、大量の強心剤投与を行っても血圧の維持が困難な状態(重症心不全)では、心臓を補助する目的で次のような補助循環装置を使用します。

●大動脈内バルーンパンピング(Intra-aortic Balloon Pumping:IABP)
●経皮的心肺補助装置(Percutaneous Cardiopulmonary Support:PCPS)
●補助人工心臓(ventricular assist device:VAD)

IABP とPCPSは補助量、補助期間に限界があり、重症になれば心臓機能の回復および全身血液循環の維持が十分に期待できません。
侵襲が大きくなりますが、長期安定した強力な循環補助を行うには「補助人工心臓」が必要となります。
心臓機能の主たる機能を果たす「左心室」を休ませる「補助人工心臓」を装着しますが、必要があれば「右心室」を補助する「補助人工心臓」も追加して装着することもあります。

3.補助人工心臓

当院で使用する体外式補助人工心臓は、血液ポンプ・カニューレ(脱血管・送血管)・コンソール(駆動装置)から構成されます。

3.補助人工心臓
3.補助人工心臓
3.補助人工心臓

コンソールで空気駆動制御された吸引力により、心臓の左心室に挿入された脱血管カニューレから血液を汲み出し、ポンプに流し込み、コンソールの駆出力によりポンプから大動脈に挿入された送血管カニューレを介して、血液を戻します。
このシステムで、5L/分以上の大量の血液を吸引・駆出することができます。
(全身の血液循環が格段に改善します)

手術時間は、通常6~12時間程度ですが、患者さんの状態により異なります。
通常の心臓手術と同様に、全身麻酔・人工呼吸器管理・胸骨正中切開・人工心肺を使用した手術となります。
(【心臓大血管の手術の概要】を参照下さい)

人工心肺を使用しながら、
●送血管(人工血管+カニューレ)を上行大動脈に縫着します。
●左心室に穴をあけ、脱血管カニューレを挿入し縫着します。
●送血管・脱血管カニューレを、それぞれ皮膚を貫通させ、血液ポンプと接続します。
●血液ポンプとコントローラーを接続して補助人工心臓を駆動させます。
これらの手技を終了すると、人工心肺装置から離脱して装置から切り離します。
その後、出血をとめて胸骨をワイヤーで固定し皮膚を縫って手術を終了します。

最も望ましい経過としては、合併症を起こさず、患者さん自身の心臓の機能が回復し、補助人工心臓が不要と判断されるというものです。
その際には、体外式補助人工心臓を抜去する手術を改めて受ける必要があります。
この体外式補助人工心臓による治療で、心臓機能が回復しない場合には、補助人工心臓をつけたままで、退院することを考えねばなりません。
補助人工心臓をつけたままの日常生活を行うには、ポンプを体内に設置するより小型な植込み型補助人工心臓に交換する必要があります。

4.重症心不全治療におけるリハビリテーションの重要性

補助人工心臓を装着する手術が終わったら、体力回復を目標として、リハビリテーションを行うことになります。
治療の効果を最大限に生かすために、リハビリテーションはとても大切です。
適切なリハビリテーションを根気よく続けることは、心臓機能の回復への何よりの近道となります。
手術を受けた患者さんのリハビリテーションは、まずベッドの上で上半身を起こしたり、負担の少ない動作の訓練から始めます。
また、理学療法士など他の人に手足の曲げ伸ばしなどをしてもらって、筋力や運動機能の低下を防ぎます。

当院では、充実したリハビリスタッフと施設を有しています。
順調に回復してきたら、自分で立って病室内を自由に歩けるようにリハビリテーションをすすめます。
さらに病棟内を歩いたり、自転車をこいだりするような積極的な運動を順次取り入れていきます。